Z世代が酒を飲まない理由
ノンアルコール市場1兆円の誕生
「お酒が飲めない体質なんです」——かつてそう言い訳しなければならなかった。
今は違う。「ソーバー(sober/シラフ)」でいることが、ライフスタイルの選択として堂々と語られる時代だ。
バーに行っても酒を飲まない。パーティーで水を飲む。それが「意志薄弱」でも「つまらない人間」でもなく、「意識高い選択」として受け入れられる文化が、特に若い世代を中心に急速に広まっている。
数字が変化を示している。
2023年のギャラップ調査によると、35歳以下のアメリカ人でアルコールを飲むと答えた人の割合は62%——20年前の72%から10ポイント下落した。2025年8月時点でアメリカ人全体の飲酒率は54%、過去90年近いギャラップ調査の歴史で最低を記録した。
IWSRの調査では、2024年のノンアルコール(ノロ)ビールの販売量は2019年比で175%増加。専門家はノンアルコールビールが2025年末までに世界第2位のビールカテゴリーになると予測する。
ノンアルコール飲料市場全体では、2024年の世界市場規模が約1兆円規模に達しているのが現状だ。
SNSとインターネットを通じて、アルコールの健康リスクに関する情報に常時さらされている世代だ。「アルコールは少量でも発がんリスクがある」という研究が広まり、「酒は百薬の長」という認識が崩壊した。
「不安感が増す」「睡眠の質が下がる」「次の日のパフォーマンスが落ちる」——メンタルヘルスへの影響を実感して飲酒を減らすZ世代も多い。
財務的な理由
バーやレストランでのアルコールは高い。物価高が続く中、若者が支出を見直す際に「お酒を減らす」という選択をしやすい。
ソーシャルメディアとの関係
常にスマートフォンで撮影・投稿する文化の中で、「酔った失態を晒したくない」という意識がある。常に記録される世界では、酔うことのリスクが高い。
大麻の合法化(アメリカの場合)
アメリカでは18〜25歳の約36.5%が過去1年間に大麻を使用している。酒の代替として大麻を選ぶ若者の存在も、飲酒率低下の一因として挙げられている。
「ソーバー・キュリアス(sober curious/飲まないことに好奇心を持つ)」という言葉が2018年頃から広まった。完全な禁酒ではなく、「なぜ飲むのか?を意識的に問い直す」というアプローチだ。
「ドライ・ジャニュアリー(1月は酒を飲まない)」はその象徴的な動きだ。2025年には30%のアメリカ人が参加し、2024年比で36%増加した。
ソーバーバー(酒を出さないバー)がニューヨーク、オースティン、アトランタなどで続々開業している。雰囲気はバーそのものだが、メニューはノンアルコールカクテル、コンブチャ、機能性ドリンクで構成される。「社交の場がほしいが酔いたくない」という需要に応える新業態だ。
食品・飲料業界の対応は素早かった。
「アサヒドライゼロ」「キリンフリー」——日本でも以前からノンアルコールビールは存在していたが、「アルコールが飲めない人のための代替品」という位置づけだった。
今は違う。「飲まないことを選んだ人のためのプレミアム飲料」として、全く新しいカテゴリーが生まれている。
ノンアルコールジン、ノンアルコールウイスキー——本物のスピリッツと同じ風味を持ちながらアルコールゼロの飲料が、高級ボトルに入って高価格で販売されている。「アトラス・マンキー」「シードリップ」「Avec」——新興ノンアルコールブランドが急増した。
マクドナルド等のファストフードチェーンも、アルコール非含有の炭酸飲料・機能性ドリンクのラインナップを拡充している。
しかし最新データには興味深い「揺り戻し」も見える。
IWSRの2025年6月調査では、合法飲酒年齢のZ世代でアルコールを摂取したと答えた割合が2023年の66%から2025年には73%に上昇。「Z世代の飲酒離れ」は他の世代と「ほぼ同水準に戻った」とも解釈できる。
エコノミストのマランドラキス氏は「Z世代は飲酒を止めたのではなく、飲酒に関する先駆者だった。今は他の世代もその考えを取り込みつつある」と分析する。
さらに注目されているのは「GLP-1(オゼンピック等の肥満治療薬)」の影響だ。モルガン・スタンレーの研究によると、GLP-1は飲酒量を最大75%減少させる可能性がある。肥満治療薬が酒類業界の「地平線上の氷山」になりつつある。
日本でも若者の飲酒離れは進んでいる。居酒屋の売上低迷、飲み会文化の衰退——これはZ世代の「飲まない選択」が一因だ。
「とりあえずビール」が常識だった文化が、静かに変わっている。
その変化は単なる「ブーム」ではなく、食と健康と社会的つながりに対する価値観の根本的な変容かもしれない。
それでは今回はこれでおしまい。
ではまた、次のレポで














デン太郎さん、こんにちは!
とても面白い記事でした✨
私はお酒に弱くて、ほんの数口で顔が真っ赤になるし、アルコールが長く残るので飲みの席はあまり楽しめない方でした。
良い時代になったなあ…としみじみしました🥰
デン太郎さん
おもしろかったです!
アメリカでは大麻がお酒の代替手段になっているというのには驚きました。
飲みの場では「お酒を飲むのが当たり前」という常識がなくなり、その人の気分や好みに合わせて楽しめる時代が来つつあるのは、うれしいことですね😊