サブスタの夏休み ~わくわくの観察日記~
軽率に師匠を尾行してはいけない理由。
午前11時。
わくわく師匠宅前。
物陰に隠れて息を殺している。
弟子入りしてから約二カ月、いまだに師匠の生態が見えてこない!
普段、いったいなにをしているんだ…
気になったので、つけてみることにした。
電柱の陰にしゃがみ込み、時計を何度も確認。
(まだかな、まだかな、、)
師匠の知られざる一日というものを、この目で見届けてやろうと思い立ったのが三十分前。正直、そろそろ足がしびれてきた。
ガチャリ……
「きたぞ。」
玄関の扉が開き、師匠がのんびりとした足取りで出てきた。電柱に体を押し付けたまま、そっと後を追い始める。バレちゃだめだ、絶対に。
師匠の足はまっすぐ近所のホームセンターへ向かった。
店内をふらふらと歩き回ったかと思うと、大きな業務用カートを引っ張ってきて、そこに木材、ガスバーナー、土鍋を次々と積み込んでいく。
(どういう組み合わせ?なんか作るの?)
そのままレジで会計を済ませ、袋に入れてと思ったら、カートを返却口に戻すことなく、そのまま外へ押し出してしまった。店員が呼び止める声も聞こえたが、振り返る様子は一切ない。
シャー――――----ッ
物凄いスピードでカートに乗って走り去っていった。
買い物カートって、本来あんなスピードが出る乗り物なの?
(師匠!待ってくださいよォ!)
心の中で叫びながら、全力で追いかけた。幸い、師匠はまだこちらに気づいていない。
師匠を乗せたカートはそのまま近くのスーパーへと吸い込まれていった。自動ドアを抜けても速度を緩めず、ホームセンターのカートに乗ったまま堂々と入店。店内を一切迷うことなく、行き着いた先は精肉売り場。
どこからともなく真っ赤な三角コーンを取り出してきて、それを鶏もも肉のパックがずらりと並ぶ一角にぐるりと配置し始める。
あっという間に、精肉売り場を占領。
続いて、さっき買ったばかりの木材をおもむろに口に入れ、バリボリと嚙み砕き始める。
嚙み砕かれた木片は焚き火にちょうどいい形へと変わり、
ガスバーナーで着火 on Fire。
上に土鍋をどんと置く。
そのまま、鶏ももしゃぶしゃぶを始めた。陳列されている鶏もも肉を次々とつかみ取っては鍋に放り込み、猛スピードで平らげていく。あんなにも可愛い小さな体のどこにそれだけの胃袋が入っているんだろう。
まさに暴食の魔獣と呼ぶにふさわしい生き物。
しばらく食べ続けたところで、不意に立ち上がった。
(どこに行くの?)
程なくして2リットルサイズのコーラを両手に抱えて戻ってきた。暴食のもうじうにコップなんか必要ないのだ。ペットボトルの口を直接くわえ、どばどばと喉へ流し込んでいく。
鶏ももしゃぶしゃぶを一通り平らげると、今度はスーパー内を悠々と練り歩き始めた。ワイン売り場では棚のボトルを次々とカートへ放り込み、総菜コーナーでは唐揚げのパックを片っ端から買い占めていく。
あまりの豪快さにあっけにとられて、立ち尽くしていると
師匠がおもむろに振り返った。
(まずい!!)
師匠:「……おお、デン太郎じゃないか」
(バレた…)
驚いたそぶりも見せず、さも当然のような顔でワインと唐揚げの袋をどっさり押しつけてきた。
わくわく:「持ってろ」
デン:「え、ちょっ」
荷物を受け取った瞬間、師匠はそそくさと店の奥へと走り去っていた。
重い荷物を引きずりながら必死に追いかけたが、あっという間に見失った。
「あれ?あれ?」
売り場を右往左往し、通路をのぞき込む。
いないいない….
そこら中を探し回って、息が切れるほど走り回ったところで、ふと一呼吸ついた。
そのとき、目の前を怪しい人影が横切った。
全身黒ずくめ、マスクで顔を隠した男。その男が背負っているリュックサックの隙間から、師匠がひょっこり顔をだしている。
(なんで?)
そのままリュックに収まった状態で男と一緒にスーパーの外へ出ていく。男は駐車場に停めてあった車に乗り込み、師匠を乗せたリュックごと助手席に置いた。
(何をする気なんだ、、)
わけがわからないまま、二人を追って駆け出した。
男が運転席に座り、エンジンをかけて車を発進させようとする。
その瞬間だった。
バリンッ!!という派手な音とともに、フロントガラスが内側から突き破られた。黒ずくめの男が、まるで人間大砲のようにガラスを突き破って外へ吹き飛ばされていく。何が起きたのか理解する間もなく、車内から師匠が身を乗り出し、こちらに向かって叫んだ。
わくわく:「早く乗れえ!」
状況を飲み込めないまま、反射的に運転席へ飛び込む。急かされるがまま、慌ててアクセルを踏み込み、車を発進させる。
走り出してようやく、事情を説明し始めた。
わくわく:「さっきの男、スーパーで万引きしてたんだよ」
師匠はリュックの中に潜んで犯人を尾行し、犯人がスーパーから逃げ出す瞬間を待ち構えていたのだという。そして車が動き出す直前、リュックから飛び出し、体当たりして犯人を弾き飛ばした、というわけだ。
わくわく:「正義の鉄槌ってやつだよ、へっへっへ」
師匠は満足げにそう言い放った。
「師匠、かっこいい……」と感心しかけた。
だが、ハンドルを握りながらふと違和感を覚えた。
助手席には、さっきの男のリュックがそのまま置かれている。中には万引きされた品もそっくり入ったままだ。そして今、自分たちが乗って走っているこの車も、間違いなくあの男の物である。
デン:「あれ……でも師匠。リュックも、、盗品も、車に乗ったままですよね」
(・・・)
わくわく:「デン、なにも言うな。」
(・・・)
デン:「…コーラ買って帰りますか?」
わくわく:「コカのほうでよろ」
デン:「ペプシなら師匠の家の前の自販機ですぐ買えますけど」
わくわく:「舐めてんの?」
(・・・)
デン:「スーパー戻りますね」
わくわく:「うん。」
~おしまい~


















デン太郎さん
こ、こ、これは、、、
怪盗ワクワク物語❗️🤭